台風19号による浸水被害は、河川の氾濫に加えて、都市部では大量の雨水を下水道から川に排出できなくなって水が地上にあふれ出る内水氾濫を引き起こした。川崎市や東京都世田谷区ではマンションや病院の内部にまで大量の浸水が起きて、予想外の事態を招く結果になった。これまで大きな災害リスクにならないとされていた都市部の内水氾濫の今後の対応策について、都市工学が専門の古米弘明・東京大学工学系研究科教授に聞いた。

(SeanPavonePhoto/gettyimages)

排水能力の限界

Q 内水氾濫はどんな時に起きるのか?

古米教授 下水道は都市に降った雨水を排除する役割を担っており、河川に放流するためのポンプなどが整備されてきた。しかし、近年、ゲリラ豪雨と呼ばれるような局地的な大雨が頻発し、全国各地で浸水被害が多発している。

 今回の台風19号の場合は、広域で長時間にわたり大雨が降ったケースだが、局所的に短時間に1時間に80㍉から100㍉降ることで起きる場合もあり、区別して考える必要がある。局所的な場合は、通常は下水道の排水路などを通して排水されるが、その排水能力は設計上1時間に50㍉の雨に対応した排水能力しかないので浸水することはある。

 現在の整備目標は、これまで最大の降雨でも床上までは浸水しないことだ。そのためには排水能力を強めるとか、雨水の調整池や貯留池を設けることなどが求められる。

>>続きを読む