1月13日に総統選を控える台湾は、長い歴史の中で、幾度となく他国の支配を受けてきた。中国の習近平国家主席は台湾統一の意欲を繰り返し表明しているが、台湾は拒み続けている。巨大な中国に比べると規模は小さいとはいえ、新型コロナのパンデミックではデジタル担当大臣オードリー・タン氏による的確な対応で注目されたほか、半導体生産では世界のトップを走るなど、存在感を高めている。そんな台湾社会のアイデンティティはいかにして育まれたのか。さまざまな歴史を解説しながら教えてくれるのが『台湾のアイデンティティ 「中国」との相克の戦後史』(家永真幸著、文春新書)だ。
(東野 望:フリーライター)
支配によって形づくられた独自のアイデンティティ
現在、「台湾」が国交を結んでいるのは世界でたった13カ国に過ぎない。日本やアメリカをはじめとする多くの国々は台湾を独立した1つの国家と認めていないのだ。台湾は独自の統治機構を備え、安定した秩序を保っているのにもかかわらずだ。