8月に台湾で起きたペロシ米下院議長の訪台、それに続く中国の軍事演習では、水面下のサイバー空間でも「心理戦」や「認知戦」と呼ばれるグレーゾーンの戦いが展開されていた。台湾のサイバー攻撃問題の第一人者である沈伯洋・台北大学犯罪研究所助理教授から話を聞いた。

ペロシ米下院議長訪台による緊張状態でも、中国による情報戦が繰り広げられた(AP/アフロ)

状況に応じ偽情報の中身が変化

野嶋:ペロシ議長の訪台のときに台湾にもサイバー攻撃がありました。一連の中国による「認知戦」をどのように見ていますか。

沈伯洋 1982年生まれ。犯罪学の観点からサイバー攻撃を研究し、中国の台湾に対するサイバー攻撃の実態について、台湾メディアに登場することも多い。自らNPOを主催してサイバー攻撃への市民レベルでの注意喚起の必要性を訴えている。

沈:ペロシ議長の訪台について、中国は最初ツイッターで活発な情報工作を展開しました。この問題の主要な工作対象は、多くの国民がツイッターを使っている米国だと見ていたからです。私たちの調査では7月30日から31日にかけて劇的に中国のものとみられるアカウントが創設され、多くの偽情報が発信されています。

野嶋:具体的には、どんな偽情報ですか。

 

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