井上馨 写真/近現代PL/アフロ

(町田 明広:歴史学者)

渋沢と長州藩の領袖・伊藤と井上との腐れ縁

 明治時代に入ってからの渋沢栄一は、静岡藩に仕え、その後明治政府で官の道を歩んだものの、実業界に移った以降は再び官には戻らず、政治家になることもなかった。しかし、渋沢のネットワークは尋常なものではなく、同時代の政治家とは広く交友関係を維持していた。その中でも、渋沢が高く評価した政治家として、伊藤博文、井上馨、原敬らの名前を挙げることができる。

 伊藤博文とは、渋沢が新政府に出仕して以来の関係で、同じく農民出身ということも相まって、非常に親しい間柄であった。新国家を軌道に乗せるべく、様々な近代制度の創設や整備から始まり、数多くの問題で渋沢と伊藤は協力関係にあった。

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