中谷昇氏は、警察庁でサイバー犯罪対策に従事後、国際警察協力機関であるインターポールのサイバー犯罪対策組織の初代総局長を務めた。個人から国家まで、ネット空間の脅威にさらされる今、われわれはどのような点を認識すべきかを聞いた。
聞き手/構成・編集部(濱崎陽平)
中谷 昇 Noboru Nakatani 
Zホールディングス常務執行役員GCTSO
1993年警察庁入庁、情報技術犯罪対策課課長補佐などを歴任。2007年、国際刑事警察機構(インターポール)にて経済ハイテク犯罪課長、情報システム・技術局長を歴任。12年にインターポールのサイバー犯罪対策組織IGCI(INTERPOL Global Complex for Innovation)の初代総局長に就任。19年4月よりヤフー執行役員。

編集部(以下、──)サイバーセキュリティーの第一線を歩んできた立場から、ネット空間における変化をどう感じるか。人々のセキュリティー意識は高まっているのか。

中谷 最近強く感じるのは、ネット空間がますます実社会と融合して「公共空間化」している点だ。インターネットの世界は、当初は一部の人間だけが使うクローズな世界を前提に発展したが、今やそのスケールは圧倒的に広がり、個人の行動が直接的に軍事の世界にもつながっていく。『スマホを落としただけなのに』という映画があったが、まさに個人の1回の操作や過ちが、想像もしない行為につながる次元にいる。

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