酒は「人間関係の潤滑油」と言われる。確かに会社の上司や部下、取引先などと酒を酌み交わし、本音をさらけ出すことで信頼関係を深め合えることもある。だが逆に、酒が入ったときの言動によって信頼関係をぶち壊してしまうこともあるのは読者諸兄もご存じの通り。同じことは政治や外交の世界でも起きている。上手に酒を使って仕事をした政治家もいれば、酒で取り返しのつかない失態を犯した者も……。そうした古今東西の政治家の酒にまつわるエピソードを集めた『政治家の酒癖』(栗下直也著、平凡社新書)が面白い。同書の中から選りすぐりのエピソードを紹介したい(JBpress編集部)。
4月6日付の米政治専門サイト「ポリティコ」に、同誌シニア特派員のコールカットら4人が連名で論説を寄せ、4月5日からの訪中で、中国は、フランスのマクロン大統領は厚遇し、ファンデアライエン欧州連合(EU)委員長は冷遇し、あからさまに欧州の分断を図ったと述べている。
それは二つの訪中だった。中国は、マクロンとフォンデアライエンを「分割統治」しようとした。マクロンの日程は満杯、フォンデアライエンの日程はスカスカだった。マクロンが4月6日の夜、習近平との華美な国賓晩餐に出席した時、フォンデアライエンはEU代表部で味気のない記者会見をしていた。中国国営メディアが中仏友好を打ち上げていた時、中国のSNSは、フォンデアライエンを米国の傀儡だと悪魔扱いしていた。
マクロンがフォンデアライエンに訪中参加を求めたのは、欧州結束のためだったが、結果はそれどころではなかった。