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〈最終の息する時まで生きむかな生きたしと人は思ふべきなり〉

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【産経抄】6月3日

 歌人の小池光さんに風変わりな一首がある。〈信長が斃(たほ)れし齢(とし)にわれなりて住宅ローン残千八百万〉(歌集『静物』所収)。天下統一の夢に破れて果てた人、夢のマイホームを手に入れながら月々の返済にあえぐ人、その対照に微苦笑を誘われる。

 ▼織田信長は50歳を前に自刃した。本能寺の変がなければ、生涯を現役として駆け抜けたはずである。働ける年齢が延びた今の時代、「定年まで残りわずか」とローンの完済を急ぐ人はどれほどいるのだろう。「定年」という言葉の意味が極めて曖昧に思えてもくる。

 ▼少子化時代に不足する労働力を、定年後も余力十分の世代に求めるのは成り行きといっていい。問題は、長年の経験や円熟の技につける値段である。多くの企業で実施されている定年後再雇用者の賃下げについて、大部分は「不合理ではない」と最高裁が容認した。

 ▼手元に退職金がある。年金支給も近い。それらの事情を踏まえた判断は理解できるが、高齢者が経済的に行き詰まる「長生きリスク」の言葉もある。やがて来る「人生100年」の時代を思えば、定年後に待つ人生の山坂も多い。再雇用者には厳しい知らせだろう。

 ▼企業の側が、今回の判断にあぐらをかかれては困る。厚生労働省によると、定年制を廃止した企業は3%に満たないという。「生涯現役」の意気を胸に秘めた人は少なくないはずである。「余生」などと聞けば鼻で笑ったであろう信長も、この現状に黙っていまい。

 ▼歌人の窪田空穂に最晩年の歌がある。〈最終の息する時まで生きむかな生きたしと人は思ふべきなり〉。70歳で早稲田大教授を定年退職した後、歌集を4冊出し、昭和42年に89歳で他界した。「余生」の字を辞書に持たぬ人は、半世紀前にもいた。


タグ:産経抄
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【原坂一郎の子育て相談】嘘をつく長男…叱るべきか悩む [3)ライフ]

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【原坂一郎の子育て相談】嘘をつく長男…叱るべきか悩む

イラスト・藤原隆兵

相談

 6歳と2歳の男の子がいます。長男がよく嘘をつくのが気にかかります。手を洗っていないのに「洗った」と言ったり、明らかに弟をたたいて泣かせたのに「たたいていない」と言い切ったりします。嘘をついたときは叱るようにしていますが、この程度の嘘ならば叱らない方がいいのでしょうか。どうすれば嘘を言わなくなるか、お教え願います。

回答

 親ならば、わが子にはなんでも正直に話す子供になってほしいと思うものです。子供が嘘をついたとき、それをたしなめるのは至極当然のことです。でも、ひとつだけ振り返ってほしいことがあります。これまで、お子さんが本当のことを言ったときにも叱ってはいませんでしたか?

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【新聞に喝!】「活動家」になり果てた2紙の新聞記者 その使命は「煽情記事」を書くことか 作家・ジャーナリスト 門田隆将 [◆マスコミ]

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【新聞に喝!】「活動家」になり果てた2紙の新聞記者 その使命は「煽情記事」を書くことか 作家・ジャーナリスト 門田隆将

25日の衆院厚労委で、働き方改革関連法案の採決を図る高鳥修一委員長(中央左)に詰め寄る野党委員ら

 

 「悔し涙が出た」「信じられない思いだ」「賠償も受けられず、遺族は泣き寝入りすることになる」-働き方改革法案が衆院厚生労働委で可決された翌5月26日の朝日・毎日の紙面には、そんな過激な言葉が躍った。

 〈NHK記者だった娘を過労死で亡くした佐戸恵美子さん(68)は採決後、遺影を抱えたまましばらく立ち上がれなかった。「労働時間規制をなくす高プロを入れれば、間違いなく働き過ぎで死ぬ人が増える。賛成した議員はそれがわかっているのか」。家族の会の寺西笑子代表(69)は「結論ありきで無理やり法案を通した。命に関わる法案の審議がないがしろにされた」と憤った〉。朝日がそう書けば、毎日も遺族のコメントを引用し、さらに日本労働弁護団幹事長の〈「高プロ対象者の時間的な裁量や、業務量の裁量は、法案のどこにも書かれていない。働き手は業務命令を断れず、従わざるを得ない」〉という談話を掲載した。

 1面、社会面、論説面をブチ抜いて、働く側の過労死を助長する法案が強行採決で通った、と報じたのだ。

 事実としたら許されざることであり、国民も黙ってはいられないだろう。だが、読売や産経を読むと、まるで趣きが異なってくる

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