今年の憲法記念日は、例年になく改憲論議が低調だったように感じた。
他方、新聞の世論調査では、新聞各社によって数字はマチマチであるが、共通して改憲勢力の方が護憲勢力より上回っていた。
尖閣諸島では、中国公船によって毎日のように我が主権が侵され、台湾海峡では緊張が高まり、国民は中国の脅威を肌で感じとっている。
国内では、新型コロナウイルスの猖獗により、今ほど緊急事態条項の不備を実感する時はない。にもかかわらず、憲法論議が盛り上がらない。
憲法改正手続きを定めた国民投票法改正案が修正され、6日の衆院憲法審査会で採決、11日の本会議で衆院通過する見通しとなった。実に、8国会にわたって継続審議、つまり先送りされてきたものが、ようやく通る、というわけだ。
3年もグズグズしていた同法改正が、ここへ来て一気に進もうとしている背景には、菅義偉首相の意向が強くあるだろう。筆者の取材に、複数の自民党議員は「先月の菅首相訪米で、米国側から憲法改正を急ぐよう話があったのではないか」と口をそろえる。
一方で、安倍晋三前首相による最近の憲法改正への発言や、世論調査の結果(=左派系メディアの調査でも憲法改正が多数となる)に刺激されたとの見方もある。
北朝鮮の非核化をめぐって米朝の神経戦が始まっている。
ジェン・サキ米大統領報道官が「米政府による対北朝鮮政策見直しが完了した」と公言したのは4月30日。
ジョー・バイデン大統領がフィアデルフィアに向かうエアフォース・ワンの機内で同行記者団に明かした。
ホワイトハウス報道室が出した速記録(トランスクリプト)には「Press Gaggle」(ぶら下がりブリーフリング)とある。
これは正式の記者会見ではなく、オフカメラで記者団に非公式に行うブリーフィングを意味する。
「対北朝鮮政策見直し完了」ということを正式の記者会見ではなく、機内で、しかも「ぶら下がり」で記者団に伝えたのはなぜか。なぜこのタイミングなのか
最近、「香港の民主化運動を力で押さえつけ、北京オリンピックが終われば、中国は台湾に侵攻する」といった情報がある。
一方、北朝鮮(以後、北)は、虎視眈々と韓国占領を狙っている。
台湾有事と朝鮮半島有事とが、それぞれ別個に注目されているが、私が恐れるのは、それらが同じ時期に引き起こされることだ。
中国と北は、1961年に「中朝友好協力および相互援助条約」という軍事同盟を結び、60年経過した現在でも、中国が有事の場合いつでも朝鮮半島に軍事介入できることを定めた「自動介入」条項が存続している。
(村井友秀:JFSS顧問、東京国際大学国際戦略研究所特命教授)
米中対立が深まる中で4月16日に日米首脳会談が行われた。日米の協働が謳われた共同声明は、52年ぶりに台湾に言及し、台湾問題はルールに基づいて解決されるべきだと主張した。中国が絶対に譲れない核心的利益と主張する台湾が、日米中関係の焦点として浮上した。
ルールとは何か。現代の国際社会のルールの基本は人権である。対立の中で大規模な人権侵害が発生すれば、周辺地域の平和と安全を脅かす恐れがあり、国際的関心事項として外国の介入が正当化される(保護する責任/RtoP)。
中国の海上民兵と思われる220隻に上る船舶が3月上旬からほぼ一ヶ月の間、南沙諸島のウィットサン礁に集結した。これに対してフィリピン政府は珍しく強く抗議した。
ウィットサン礁はフィリピンの沿岸から200海里以内の排他的経済水域内(フィリピン本土から320キロ、中国から1060キロ)に位置し、フィリピンが領有権を主張してきた。これに対し、中国は南シナ海のほぼ全域に対する権利(いわゆる「九段線」)を主張する。2016年にフィリピンの提訴を受け、海洋法条約に基づく仲裁裁判所は、中国の「九段線」の主張を否認している。しかし、フィリピンのドゥテルテ大統領は、この問題で中国と対決することを避け、曖昧な態度をとってきた。
今回、ドゥテルテ政権は、これまでとは異なる反応を見せた。3月21日、ロレンザーナ国防相は220隻の中国の船が「我々の主権的領域」から出るよう要求した。その2週間後、同国防相は中国が「国際法を全く無視している」と批判した。ロクシン外相は、中国の「見え透いた虚偽」を強烈に非難した。さらに、4月19日にはドゥテルテ大統領自身が、南シナ海における石油や鉱物資源の領有権を主張するために軍艦を派遣する用意ある旨を述べた。