近現代史への関心は高く書物も多いが、首を傾げるものも少なくない。相当ひどいものが横行していると言っても過言ではない有様である。この連載はこうした状況を打破するために始められた、近現代史の正確な理解を目指す読者のためのコラムである。
陸軍中野学校
「秘密工作員」養成機関の実像

山本武利 筑摩選書 1870円(税込)

 陸軍のインテリジェンス教育学校である陸軍中野学校は市川雷蔵主演の大映映画(1966年)で知られだし、ルバング島で戦後長きにわたり降伏せず戦っていた小野田寛郎さんの出身学校としてよく知られるようになった。しかし実像はあまり知られていない。一般向き書物も映画の原作になったものをはじめいくつも出ているが、対象が対象だけにどこまで本当か分からないようなものが多いのである。そうした中、本書は陸軍の公式書類に初めて依拠して書かれている。

 母体ははっきりしないが36年に新設された陸軍省兵務局内で設置が決められ、改変の後、結局40年に所在地の名称から陸軍中野学校となっている。

 

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