トランプ大統領は、アフガニスタンからの米軍撤退に係わるタリバンとの交渉を急がせてきた。これは、地域における力の真空を招き、テロリストの跳梁や周辺国の介入といった不安定化につながるとして懸念視されている。そうした中、9月5日のタリバンによるカブールにおける自爆テロで米兵を含む12名の犠牲者が出たことで、タリバンとの和平交渉の中止を表明した。トランプのアフガン政策の根本的な方針転換を意味することになるのだろうか。これまでの交渉の経緯を振り返ってみると、次の通りである。

Sapunkele/MaryValery/iStock / Getty Images Plus

 

 ザルメイ・ハリルザード(アフガニスタン和平担当特別代表)が交渉していた合意では、タリバンがアルカイダと絶縁することと引き換えに、1万4000人の米軍とNATOの部隊が撤退することになるとのことであった。トランプはまず最初の5000人の撤退を発表したくて苛立っていたようで、既にその準備が始まっている、とも報じられていた。

 ハリルザードの交渉で見えつつあった合意によると、アフガニスタン政府の崩壊、基本的人権を否定するタリバンの過酷な独裁、IS系を含む過激派グループの勢力拡大のような結果を防ぐ保護措置は弱い。合意を完成させようと急ぐあまり、保護措置は後退して来た。タリバンは政治解決についてアフガニスタン政府と交渉することに合意し、停戦についても何らかの約束をするようである。しかし、そのいずれについても、規定は詳細で明確なものではない。

>>続きを読む