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ゆうべのカレーにご用心 5月17日

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【産経抄】ゆうべのカレーにご用心 5月17日

 昭和49年に放映されたホームドラマ『寺内貫太郎一家』は、毎回のように家族そろって朝食をとるシーンで始まった。「鰺(あじ)の干物に大根おろし、水戸納豆…」。脚本を担当した向田邦子さんは、献立の内容まで細かく指示していた。

 ▼あるとき献立の最後に「ゆうべのカレーの残り」を見つけると、出演者全員が盛り上がった。「あれ、どういうわけか、一晩たつとうまいんだよな」。演出家の久世光彦さんのアイデアで献立を字幕で流すと、視聴者からも大きな反響があった。

 ▼その一晩たったカレーを原因とする食中毒が、各地で相次いでいる。今年3月、都内の私立幼稚園では、前日に調理したカレーを食べた園児ら76人が、下痢や嘔吐(おうと)などの症状を訴えた。患者の便から検出されたウエルシュ菌は熱に強く、常温で保存すると急激に増える場合がある。専門家によれば、残ったカレーは小分けしてすぐに冷蔵庫に入れた方がいいらしい。

 ▼日本を含めた世界各地で今、ウエルシュ菌より恐ろしいコンピューターウイルスが猛威を振るっている。サイバー攻撃によって、パソコンが「ランサムウエア(身代金要求型ウイルス)」に感染すると、データが暗号化されて読めなくなる。

 ▼復旧のために金銭を要求する、悪質な手口である。セキュリティーが脆弱(ぜいじゃく)な、古いタイプの基本ソフトが狙われた。身代金を支払っても、データが復旧する保証はない。

 ▼『寺内貫太郎一家』の時代の日本人は、「ランサムウエア」はもちろん、インターネットとも無縁である。ただウエルシュ菌は、そこかしこに存在していた。「ゆうべのカレーの残り」が、問題を起こした話を聞かないのは、なぜだろう。食中毒を防ぐ知恵があったのか、お腹(なか)が丈夫だったのか。

 


タグ:産経抄
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