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遺族と登る 7月25日

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2016.7.25 05:03

【産経抄】遺族と登る 7月25日

 夫婦は20年間登山を欠かさなかった。墓標はいつも手入れが行き届いている。「お供えものをして少し休んで…。この一時が、私たち二人にとってあの子のそばで一番幸せ」。

 ▼「『また来るからネ』と墓標の頭をポンとたたき、後ろ髪引かれる思いで、涙ながら下山したものでした」。日航ジャンボ機墜落事故の遺族らの組織「8・12連絡会」が編集した文集『茜雲(あかねぐも)』から引用した。筆者は、26歳の息子を失った母親である。

 ▼昨年の8月12日は、520人の命が奪われた事故から30年にあたっていた。現場となった「御巣鷹の尾根」(群馬県上野村)への慰霊登山には、過去最多の106家族406人が参加した。最近は遺族でない人の姿も目立つ。広く安全を祈る「聖地」として、とらえられているようだ。

 ▼もともと現場までは、けわしい獣道があるだけで、機動隊員でも3時間以上かかっていた。突貫工事で、登山道を造ったのは地元の上野村である。もっとも当初から応急の修理などは、日航の社員が行ってきた。23日朝、尾根から滑落して亡くなった相馬裕さん(59)も、今年の慰霊登山に向けて丸太のくいを打っていた 

▼10年ほど前の小紙に、遺族のサポート役を長く務めた日航社員のインタビュー記事が載っている。4月の山開きから11月の閉山まで登山道の整備や草刈りに励む。1週間以上泊まり込むこともあった。遺族の登山に同行するときは、足元に咲く花や植物の話をして気持ちを和らげたという。

 ▼相馬さんは、遺族対応にあたる「ご被災者相談室長」だった。「8・12連絡会」の美谷島(みやじま)邦子事務局長の信頼も厚かった。9歳の次男を事故で亡くした美谷島さんは、今年5月にも相馬さんと登ったばかりだった。

 


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