「我々は国に見放された」――。これは1996年3月、台湾初の総統選挙を巡って、中台間で軍事的緊張が高まった第3次台湾海峡危機に際し、当時、日本最西端の沖縄・与那国島の町長であった尾辻吉兼氏(故人)が、筆者のインタビュー取材に対し、真っ先に発した言葉だった。空には中国軍機が飛び回り、目と鼻の先の海にはミサイルが撃ち込まれた。「国境の守りは、国の守りそのものではないのか」との思いから、尾辻氏は町議時代、何度も政府に島への自衛隊誘致を陳情してきたからだ。

緊迫した台湾情勢が続く中、日本は自国を守ることができるのか(ロイター/アフロ)

 それから20年後の2016年、与那国島に初の自衛隊部隊である陸上自衛隊沿岸監視隊(隊員160人)が配備された。そして今回、ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問で緊迫化した台湾情勢に即応するように、自衛隊は護衛艦や哨戒機などを出動させ、米軍と連携しながら周辺海空域の警戒監視にあたった。

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