産地偽装問題で揺れていた「熊本産アサリ」の出荷が4月12日に再開された。熊本県による偽装防止策は、①水揚げからの生産流通履歴制度、②認定工場での砂抜き・選別とモデル販売協力店の認証、③QRコードでの履歴読み取りなどで、6月以降は県外にも拡大ということだ。しかし、長年にわたって続いてきた「商慣行」がそう簡単に是正されるとは思えない。

(Andres Victorero/gettyimages)

 4月25日の日本経済新聞が報じるところによれば、消費者庁が改訂・周知したはずの原産地表示のQ&Aに反して、販売業者が中国産アサリ163トンを熊本県産として販売し、県の行政指導を受けたというのである。

 アサリは、ここ何十年と偽装表示の常連であり、幾多の行政指導でも一向に是正されず、事実の公表、さらには、短期間の「浜での蓄養」と称される風景がテレビで放映されている。これは、松坂牛、神戸牛に見られるような「品質を高めるための飼養」ではなく、短期では品質向上は見られない。仮に浜に播いたとしても「長いところルール」にまでも至らない「サギまがいの行為」と言わざるを得ない。

 偽装表示が起きる理由については、『食品偽装』(新井ゆたかほか・2008年ぎょうせい)に詳しいが、そこでは、類型を以下の4つに分けている。

① 消費者をだまして利得を得る。
② 規模拡大を優先したため。
③ 返品を処分するため。
④ 欠品を出さないため。

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<以下抜粋>

 ウナギは「江戸時代」からの古い歴史を持ち、川柳も、「江戸ならば江戸にしておけ旅鰻」、「旅鰻化粧につける江戸の水」と、「江戸前信仰」を風刺している。

 歴史をひも解いてみれば、偽装表示のご三家は、①牛肉、②コメ(コシヒカリ偽装)、③ウナギであり、それに続くのが、ウナギ以外の水産物、貝類、なかでもアサリ、いまはシジミだろうか。

 代表的なのは、①「ニセ牛缶事件」(1960年)である。「牛肉の大和煮缶詰」が実は「クジラ肉」で、主婦連合会が買上げ調査したところ、数多くの事例が、「馬肉が牛肉に化けていた」、つまり、価格差を悪用したのである。