中国の〝熱帯への進軍〟は、ウクライナ問題の動向に世界の耳目が注がれている間も止むことはない。習近平政権の東南アジア諸国連合(ASEAN)に対する浸透姿勢がこのままジワリジワリと続けば、前世紀半ばから70余年にわたって我が国官民が営々と築いてきた東南アジアとの結びつき――日本の外交的資産であり、日本経済の基盤――は齟齬を来し、国際社会における日本の立ち位置を現状より後退させる恐れは否定できそうにない。

中国の王毅外相がミャンマー軍が外相に任命したワナ・マウン・ルウィン氏と会談するなど、ASEAN諸国への影響力拡大を進めている(新華社/アフロ)

 「自由で開かれたインド太平洋」は、膨張する中国の影響力を最前線で受け止め押し返すために構想されたはずだが、東南アジアにおける中国の影響力の伸張ぶりからして、当初の狙い通りに機能することが出来るのか。首を傾げたくなる。むしろ中国の〝風圧〟によって東西に分断される可能性さえ考えられるのである。

 そうなった時、東南アジアにおける日本の活動空間も、これまでとは違ってくるだろう。

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