前回「住居喪失者への差別的対応 生活保護制度は変われるか」は、生活保護制度における住居喪失者への差別的対応の実態と、改善に向けた動きを紹介した。しかし、問題はそう簡単ではない。正直なところ、住居喪失者はなるべくよそに行ってほしいのが、実施機関の本音である。

(Mumemories/gettyimages)

 「責任をもつのはそっちだ」「いや、そちらだ」という実施責任をめぐる実施機関のバトルは日常茶飯事で、仲裁のために細かなルールがつくられてきた。ルールづくりは実施機関の都合が優先され、生活に困窮する人たちの人権を守るという視点は軽視されている。

「1日でも早く廃止にしたい」という行政の本音

 足立区の検証報告では、担当者は『東京都生活保護運用事例集』(以下、「東京都運用事例集」という)の判断基準をもとに廃止処分をしたとされる。主な根拠とされたのが「問2-6」である。検証報告では、一部を省略する形で引用している。

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