(図1)徳川時代の平和を象徴する⼤名⾏列の図「拾万石御加増後初御入国御供立之図」(津山郷土博物館所蔵)

(乃至 政彦:歴史家)

 一般的に儀礼の行列から発展したと考えられている「大名行列」。この行列の編成様式に注目した歴史家・乃至政彦氏は、その起源は上杉謙信が武田信玄に大勝した「川中島合戦」の軍隊配置にあったと解く。平安時代の天皇の行幸から、織田信長、明智光秀、伊達政宗ら戦国時代の陣立書、徳川時代の大名行列や参勤交代の行列まで、「武士の行列」を大解剖した乃至氏の書籍「戦う大名行列」の発売(電子&web版のみ)を記念し、序章を3回に分けて公開する(JBpress)。

◉軍隊行進だった「大名行列」(1)(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68907

財政圧迫だけではない「大名行列」の目的 

 もし⼤名財政の圧迫、つまり⼤名の弱体化を⽬的とするものだったら、幕府はまず斬り捨て御免の習俗からやめさせるべきだっただろう。

 斬り捨て御免は、地⽅の⼤名たちに「我らは⾃⼰判断による武⼒⾏使が可能な存在だ」との思いを強めさせる恐れがある。幕府が本⼼から⼤名を⼼服させたいのなら、彼らが特権的な戦⼠階級であることを忘れさせ、腑抜けの集団にさせる⽅がよい。そのためには、⼤名⾏列の武装を禁⽌するのが合理的ではないだろうか。

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