人間とAIの役割分担 
翻刻で高める古文書の価値 

 AIと市民が助け合う──。近未来の話のようだが、実はもうすでに成果を挙げている事例がある。2017年に京都大学古地震研究会が始めた「みんなで翻刻」だ。元々は、過去の地震を記録した歴史資料の解読を目的に、地震学をはじめとする全国各地の研究者が情報共有するプラットフォームとして立ち上げられた。

 〝みんな〟の輪が広がる契機となったのは、同研究会のメンバーで、国立歴史民俗博物館の橋本雄太助教が開発した「くずし字学習支援アプリKuLA」だ。くずし字が読めなければ、江戸時代より前の古文書は読めない。そこで、橋本氏が中心となり同アプリを作成すると、1カ月で1万ダウンロードと予想を上回る反響があった。「古文書を読みたい人がこんなにいるのかという驚きとともに手ごたえを感じた」と橋本氏。市民科学として歴史資料の翻刻を行う海外の先行事例も後押しとなり、現在の市民参加型のプロジェクトに発展した。

スマホアプリでくずし字を学び、古文書を読む (YUTA HASHIMOTO)

 市民参加型に拡張した「みんなで翻刻」には、これまで約5000人が参加、2000万字を超える史料が翻刻されている。参加者の年代や属性はさまざまだ。かつて国文学を学んでいたセミプロや1人で100万字を翻刻した強者もいれば、まったくの初心者もいる。そこでAIの出番だ。凸版印刷、人文学オープンデータ共同利用センターがそれぞれ開発した2種類のAIが使用されている。

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