2020年から21年にかけての一時期、アメリカではホワイトカラーのオフィスワークは原則として全てリモート(テレワーク)となった。これは、感染対策の一環として各州政府が発動した強制的な措置、つまりロックダウンの一つとして行われた。

(kazuma seki/gettyimages)

 具体的には工場や建設現場、運輸、小売といったリアルでなくては成立しない職種を「エッセンシャル・ワーク」と定義し、それ以外の職種に関しては出勤を禁じたのである。ちなみに、企業として小売やサービスなど現業部門を持っていたとしても、総務経理など間接部門で知的労働が主である職種は同様に出勤禁止とされていた。

 一時期はウォール街を含むニューヨークのマンハッタンなど、世界有数のオフィス街から人影が消えた。また西海岸のシリコンバレーに林立する、ハイテク企業の巨大「キャンパス」も無人となった。

 その結果として何が起きたのかというと、リモートに移行した産業、すなわちハイテクと金融に関しては、短期的な業績としてはコロナ禍の影響を受けず、むしろ成長を続けて株価も上昇したのである。その背景には、2010年前後からアメリカではリモート勤務が部分的に多くの企業で導入されており、基本的なインフラ、つまり端末の運用や仮想ファイアウォールなどセキュリティ対策が完備していたことが指摘されている。

>>続きを読む