対中政策の厳格化に慎重なメルケル首相 (SEAN GALLUP/GETTYIMAGES)

イントロダクション

戦略的自律を目指す欧州
試される日本の外交力

文・鶴岡路人  Michito Tsuruoka(慶應義塾大学総合政策学部准教授)

 欧州の対中姿勢、認識が急激に厳しくなっている。ドイツをはじめとする欧州企業の買収攻勢による技術流出への懸念や、香港や新疆ウイグル自治区などでの人権問題の悪化などが影響した。これらに、新型コロナウイルス感染症に関する初期対応の遅れや情報隠蔽が加わった。さらに、「戦狼外交」と呼ばれる、恫喝をも含む中国による強硬な対外姿勢が、欧州の反発を強める結果になった。

 パワーバランスの変化という構造的要因もあるが、中国自身もオウンゴールを重ねた。続くベナー氏の論考が指摘するように、欧州におけるトランプ政権への反発は、中国にとっては、欧州を懐柔する絶好の機会だった。しかし、中国はこれを完全に逃した。

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