「生徒たちのために卒業記念講演をしてくれませんか?」――2017年、麹町中学校長の工藤勇一氏は澤円氏へそんな依頼を投げかけた。外資系大手IT企業のカリスマプレゼンテーターが公立中学校で講演する。その奇跡の裏には、偶然の出会いから生まれた2人の共鳴があったという。「当日は僕の失敗体験ばかり話したんです」と語る澤氏。生徒たちだけでなく、多くの保護者からも共感を呼んだという卒業記念講演の裏側を聞いた。

 

みんなはまだ、挫折なんてしていない

工藤:卒業記念講演には特別な狙いがあるんです。都立高校の合格発表を間近に控え、3年生の進路が決定しつつある時期に行っています。

澤:生徒のみなさんが、いろいろな希望や不安を胸に抱えている時期ですね。

工藤:はい。「15歳はまだまだ人生の始まりの地点で、高校受験での失敗などは大した挫折ではないんだ」ということを伝えたいんです。高校は大人になるまでの通過点にすぎない。そもそもみんなが第一志望に入れるわけじゃないんだから、希望する高校へ進めなくてもどうってことないんだよ、と。

 

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