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北海道地震・・道なき道をさまよっていた武四郎の心細さを平成の終わりになって、強いられるとは…。

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【産経抄】9月7日

 明治維新後、蝦夷(えぞ)地は北海道と命名された。それから150年目に当たる今年、道内各地で記念事業が行われてきた。名付け親となったのが、幕末の探検家、松浦武四郎である。

 ▼6度にわたり、道内から千島、樺太(現サハリン)を調査して、日誌、紀行類など186巻を残した。安政5(1858)年には、現在の苫小牧市から厚真町(あつまちょう)に入り、アイヌ民族の村で2泊している。現在は「町の犬」に指定されている厚真犬を、狩猟犬として大変優れている、と日誌に書き残していた。

 ▼日本列島を縦断した台風は各地に大きな爪痕を残した。追い打ちをかけるように6日未明、北海道で最大震度7の地震が発生した。震源に近い厚真町は大規模な土砂崩れに見舞われ、住宅が倒壊、住民が閉じ込められた。山々の緑は引きはがされ、無残な姿をさらしている。台風による大雨で、地盤が緩んでいたようだ。

 ▼火力発電所の緊急停止は、道内すべての約295万戸が停電するという異常な状況を招いた。新幹線を含めた鉄道が運転を見合わせ、新千歳空港は閉鎖、道路も各地で寸断されている。

 ▼住民にとって何よりの気がかりは、テレビや電源が切れたスマートフォンから情報が入手できなくなる事態であろう。停電が、どれほどの苦痛と不便をもたらすのか。台風による浸水のために関西国際空港に取り残された利用客がいやというほど味わったばかりである。クーラーは利かず、家族とも連絡が取れなくなった。

 ▼厚真町にある、武四郎の碑には、滞在中に詠んだ歌が刻まれている。〈えみしらも 志らぬ深山に分けいれば ふみまようべき 道だにもなし〉。道なき道をさまよっていた武四郎の心細さを平成の終わりになって、強いられるとは…。


タグ:産経抄
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