「お会いするたびに『この人にはかなわないな』と思うんです」――。工藤勇一氏が、深い尊敬の念を込めてそう評する人がいる。大阪市立大空小学校の初代校長を務めた木村泰子氏だ。「すべての子どもの学習権を保障する」という理念を掲げ、教職員や地域の人々とともに新たな学校づくりのあり方を示した木村氏。その取り組みは『みんなの学校』として映画化され、教育関係者を中心に数多くのフォロワーを生み出している。日本の教育改革のために情熱を捧げる2人は、どのように共鳴し、何を語り合うのか。シリーズ特別編として、その対談模様を紹介したい。

工藤勇一氏・千代田区立麹町中学校校長(左)と、木村泰子氏・大阪市立大空小学校初代校長(右)

人間は、見えやすいところばかり見るもの

工藤:木村さんが子どもたちや教職員、地域の人々と一緒に作った大空小学校には、校則や決まり事がほとんどありませんね。普通の学校には何かしらあるものなのに。

木村:掲げたのは「すべての子どもの学習権を保障する」という理念だけです。虐待されていようが障害があろうが、どんな環境であろうが、地域の宝である子どもは誰一人として排除されてはいけない。だから「みんなの学校」なんです。校則や決まり事を作ると、教員がそこばかり見てしまって子どもを見なくなります。

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