前回は自身の身体改良をめざすバイオハッキングについて議論した。身体改造が自由な社会においては、現在の人間観では許容できない人間が存在することになる。だが、人間をどのような存在として定義できるのか、という問いそのものは人類が常に経験してきたことであり、「ヒューマン」をめぐる議論は今後も様々な分野で活発に続けられるだろう。

 ところで、本連載は今回もヒューマンに関わる議論を行いたい。それは顔認識ソフトが我々に与える問題であり、ネット上の「自分」と現実を生きる「自分」が、技術によって分割されるという問題だ。これらはバイオハッキングに比較すればより身近な事例であり、我々の関心を呼ぶが、大きな意味でこれも「ヒューマン」をめぐる問題だと筆者は感じている。加えて今回は情報銀行などいくつかのテーマを横断的に議論することで、問題の所在を探ってみたい。

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