着任初年度から学校の課題を洗い出し、次々と解決策を実行していった工藤勇一氏。現場で改革と向き合う教員たちの胸にはさまざまな感情が沸き起こっていたという。工藤氏はどのようにリーダーシップを示し、「メンバー」の意識と行動を変えていったのか。麹町中学校に勤める4人の教諭に話を聞いた。

千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長(中)と4人の教諭

あなたの子育てが間違っていたわけではない

「不登校の生徒全員と面談をしたい」

 着任したばかりの工藤氏がそう話すのを聞いて、主任養護教諭の新橋典子氏は驚きを隠せなかった。当時は赴任4年目。「保健室の先生」と慕われる新橋氏にとって、学校になじめず苦しんでいる何人かの生徒がいることは一番の気がかりだった。

新橋典子教諭

 

「不登校の生徒に対して、学校は担任へ『頻繁に連絡を取るように』という方針を示していました。しかし保護者からは『あまり連絡しないでほしい』と言われるケースもあり、間に立つ教員が対応に苦慮する姿も見ていたんです。何より、最も苦しんでいたのは不登校になってしまった子どもたちとその保護者でしょう。工藤校長が全員と面談すると聞いたときには、驚きと同時にうれしく思いました」(新橋氏)

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