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今度は森友問題の長期間にわたる混乱が、外交のブレーキとなっているのではないか

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【産経抄】3月12日

 「一九七一年七月十五日という日を私は一生忘れないだろう」。田久保忠衛(ただえ)杏林大名誉教授は、著書の『戦略家ニクソン』に記している。この日ニクソン米大統領は、敵対していた中国を訪問する、と電撃発表した。

 ▼時事通信のワシントン支局長だった田久保氏は、半信半疑のまま原稿を送った。いわゆるニクソン・ショックの立役者は、キッシンジャー大統領補佐官とされてきた。田久保氏によれば誤解だ。

 ▼ニクソン氏は53年に副大統領としてアジアを歴訪して以来、中国について思考を重ねてきた。キッシンジャー氏はその手足となって動いたにすぎない。トランプ米大統領が米朝首脳会談に応じる、とのニュースも、世界を驚かすのに十分だった。

 ▼ニクソン氏と違い、トランプ氏が北朝鮮の核問題について、深い知識を持っているとはとても思えない。専門家は、北朝鮮の術中にはまる懸念も指摘する。日本としては、置き去りにされたまま事態が進んでいかないよう、米側との連携を強めていく必要がある。

 ▼ニクソン訪中をまったく知らされていなかった当時の日本政府は、パニックに陥った。自民党は、昭和44(1969)年暮れの総選挙で圧勝していた。佐藤栄作政権は、前年の70年安保問題を乗り切り大阪万博も成功させて、政治的安定を享受していた。心の緩みをつかれた形である。「1970年の1年間をムダにした」。外務省の課長だった岡崎久彦氏は、駐米大使だった牛場信彦氏の嘆きの声を何度も耳にしている。

 ▼安倍晋三政権は、昨秋の総選挙で勝利を収めたとはいえ、森友学園問題の紛糾で政治の安定どころではない今度は長期間にわたる混乱が、外交のブレーキとなっているのではないか。心配でたまらない。


タグ:産経抄
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