師走間近の11月29日午前、北の護りの要である海上自衛隊(海自)大湊地方総監部に緊張が走った。海上保安庁(海保)からのホットラインで、「津軽海峡の玄関口に位置する松前小島沖で国籍不明の木造船が漂流しているのを発見」との連絡があったからだ。

 総監部では当初、北朝鮮工作船の可能性も否定できないと身構えたが、急行した哨戒機P−3Cから伝送された写真を分析して、「エンジントラブルなどで漂流する漁船」と判断し、緊張は収まった。

 しかし、この「漂流する漁船」は、数日後にはメディアで大きく取り上げられることになる。海保による立入検査で、「朝鮮人民軍第854部隊」と書かれた標識が船体に付けられたことが分かると、メディアやネット上で「工作船」疑惑が持ち上がった。

(KCNA/UPI/AFLO)

 

 騒動は北海道警察が乗員3名を松前小島の待避小屋から家電などを盗んだ疑いで逮捕したことで幕引きとなったが、その背景について政府が説明することはなかった。

 この騒動について、東京・市ヶ谷で北朝鮮情勢を分析する防衛省関係者は、「北朝鮮の木造船が続々と漂着する理由を紐解いていくと、弾道ミサイルよりも危険な火種が存在することが見えてくる」と明かす。

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