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世の中にこれほどの理不尽はあるだろうか 11月28日

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【産経抄】世の中にこれほどの理不尽はあるだろうか 11月28日

秋田県由利本荘市の「本荘マリーナ」付近に漂着した、北朝鮮から来たとみられる木造船。25日早朝には姿が見えなくなった=24日(福島範和撮影) 

 

 作家の故吉村昭さんに『船長泣く』という短編がある。漂流した漁船で乗組員が次々に死んでいくなか、船長は遺書を書いた。「トッタンノイフコトヲキキナサイ。オキクナリテモ、リョウシハデキマセン。カシコクナリテクレ、タノミマス」。

 ▼漁師になって自分と同じ運命をたどるな、と幼い息子に説いている。書き終えた船長の目からは、涙がにじみ出た。モデルになったのは、大正15年12月に銚子沖で起きた「良栄丸」の遭難事故である。黒潮に乗って漂流し、米国のシアトル沖で翌年10月に発見されたとき、2人がミイラ、10人が白骨となっていた。

 ▼今月23日、秋田県由利本荘市の海岸に北朝鮮籍のイカ釣り漁船が漂着した。乗船していた船長ら8人の男性は全員無事だった。冬の荒れた日本海を約1カ月にわたってさまよっていたという。幸運としかいいようがない。その後男鹿市の海岸で見つかった木造船からは、8人の遺体が見つかった。やはり北朝鮮の船の可能性がある。

 ▼5年前から、脱北者ではない北の住民が日本沿岸で保護されるようになった。遺体を乗せた漁船の発見も相次いだ。背景にあるのは、金正恩朝鮮労働党委員長が力を入れている漁業の振興である。

 ▼食糧事情の悪化を食い止め、外貨も稼ごうとしている。沿岸の漁業権を中国企業に売却したとの報道もある。その結果、北の漁民は日本の排他的経済水域(EEZ)内の好漁場にまで乗り出して違法な操業を繰り返し、事故の急増にもつながっている。

 ▼過去の事例では、帰国を望む8人はまもなく本国に戻される。北朝鮮は拉致被害者を帰還させるどころか、その動静を伝えることさえ拒否したままである。世の中にこれほどの理不尽があるだろうか。

 


タグ:産経抄
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