SSブログ

モヤシは根っこもうまい 11月27日

閉じる

【産経抄】モヤシは根っこもうまい 11月27日

 ダイエーの創業者、中内功さんは生前、新しい店のオープン前に店内巡回するのを習慣としていた。少しでも鮮度の悪いモヤシでもあろうものなら、売り場の担当者の頭にザルごとぶっかけた(『カリスマ』佐野眞一著)。

 ▼モヤシがスーパーの安売り商品の目玉になったのは、いつからだろう。日本人にとって身近な野菜になったのは、インスタントラーメンが流行した昭和30年代半ばからだ。工場で生産するモヤシは、季節や天候に関係なく出荷でき、価格も安定している。卵とともに「物価の優等生」と呼ばれてきた。

 ▼ところが最近、コストの上昇が著しい。国内で消費されるモヤシの8割の原料となっているのが、中国産の「緑豆」である。その価格が10年前に比べて約3倍に跳ね上がっているのだ。たまりかねた生産者の団体は今年3月、このままではモヤシが食卓から消えてしまう、とスーパーなどに店頭価格の引き上げを訴えた。

 ▼もっとも、事態はまだ改善にはほど遠い。埼玉県内のあるスーパーでは今秋、1袋(200グラム)19円で売られていた。ピークだった平成4年頃の平均価格は41円である。これでは採算が取れるはずがない。

 ▼深谷市のモヤシ生産農家2代目、飯塚雅俊さんは、たった一人で「価格破壊」と闘ってきた。緑豆ではなくブラックマッペという豆を使い、昔ながらの作り方にこだわっている。スーパーから取引を断られ廃業寸前に追い詰められながらも、消費者にモヤシの魅力を発信し続けてきた。

 ▼その奮闘を綴(つづ)った『闘うもやし』を読むと、モヤシがどれほど誤解されてきたかよくわかる。たとえば料理の専門家は、モヤシの根を取るとおいしくなると教えてきた。飯塚さんは根っこはうまい、と断言する。

 


タグ:産経抄
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 1

コメント 0

Facebook コメント