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もうひとつの「いい夫婦」の物語 11月24日

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【産経抄】もうひとつの「いい夫婦」の物語 11月24日

 97歳の夫と90歳の妻が、ともに現役のプロとして闘っている。世界でもあまり例がない夫婦ではないか。囲碁の杉内雅男九段と寿子(かずこ)八段である。

 ▼杉内九段はトッププロとして、昭和の全盛期にはタイトル戦でも活躍した。平成に入っても気力は衰えなかった。将棋界のヒーロー、藤井聡太四段のデビュー戦は、加藤一二三九段との62歳の年齢差も話題になった。杉内さんは昨年、15歳の高校生棋士との対局で、年齢差80歳の記録をつくっている。

 ▼今年9月の毎日新聞には、女性初の九段を目指す寿子さんと自宅の碁盤で研究に励む姿が紹介されていた。「引退は考えていません」。記事で宣言していた杉内さんの突然の訃報が届いた。

 ▼2人は戦後まもなく、囲碁の研究会で知り合った。復員してきたばかりの杉内さんは、酒やたばこ、ギャンブルに無縁で、囲碁以外の会話もほとんどしない。ついたあだ名が「囲碁の神様」である。寿子さんが昇段したとき、たまたま日本棋院の廊下で会った杉内さんは、「おめでとう」と声をかけて通り過ぎた。このとき「電気に打たれたようになった」と、寿子さんはなれそめを語っている。今では珍しくない、棋士同士のカップルの先駆けでもある。

 ▼寿子さんは若い頃から短歌に親しんできた。いつしか夫婦共通の趣味となった。「いさぎよき世界に生きて半世紀 修業なかば古希とはなりぬ」「古希むかえ君青年の気概あり ともに歩まむ求道の日々を」。杉内さんが70歳を迎えたときの相聞歌である。2人はその後も、短歌のやりとりを続けただろうか。

 ▼一昨日は、英国のエリザベス女王(91)とフィリップ殿下(96)の「プラチナ婚」を取り上げた本日は、もうひとつの「いい夫婦」の物語である。

 


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