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陳謝も急ぎすぎちゃった 世界が驚く日本の鉄道 11月19日

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【産経抄】陳謝も急ぎすぎちゃった 世界が驚く日本の鉄道 11月19日

つくばエクスプレス

 日本の鉄道事業に制服制度を残したのは、後藤新平だった。かつて国有鉄道を管理した鉄道院の初代総裁である。「怠惰を制し、放逸を戒め、規律を確守し、責務を重んじ、これを全うさせる」。制服の役目を問われ、後藤はこう述べている(『時代が求める後藤新平』藤原書店)。

 ▼鉄道マンにとって、制服は第2のブレーキだろう。昨今はしかし、居眠り運転に携帯電話をいじる「ながら運転」など、先人の遺訓に背く不届き者が多い。それゆえ新鮮な驚きを伴う出来事もある。つくばエクスプレスの運行会社が遅延ならぬ「早発」を陳謝した。

 ▼今月14日、千葉県内の駅を定刻の「午前9時44分40秒」に発車するところを20秒早く出た、と。運転士の確認不足が原因だという。正確なダイヤを売り物にする日本ならではのニュースだが、「これは問題なのか」とニューヨークの大衆紙が報じたのも無理はない。

 ▼時刻表を違えたわけでも、乗り遅れた客がいたわけでもない。20秒への懺悔(ざんげ)は、「守るのは時間ではなく人の命」という自戒の表れだろう。駆け込み乗車を招きかねない早発は看過できなかったに違いない。律義な国民気質というより鉄道マンの矜持(きょうじ)をそこに見る。

 ▼後藤はどんな会議に出るにも定刻の少し前に着座した。「早し良し、丁度良し危なし」と後藤の言葉にある。鉄路の上を走るのは冷たい鉄の塊ではなく人の命である。安全を売りにする鉄道会社に敬意を表し、乗客の側も「早し良し」をせめてもの心掛けとしたい。

 ▼会社のホームページには陳謝の文に添え「お客様より当該列車にご乗車出来なかった等の申告は“ございせん”」とある。書いた人は少しの「間(ま)」も惜しんだのだろう。拙速と言うまい。「早し良し」とつぶやく。

 


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