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忍者を見倣おう 5月5日

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【産経抄】忍者を見倣おう 5月5日

 黒装束を身にまとい、敵の屋敷に忍び込む。万一見つかっても、手裏剣で応戦し、忍術を使って姿を消し去る。忍者は、歴史小説や映画、アニメなどで活躍してきた。海外でも、「Ninja」は大いにもてはやされている。

 ▼忍者は果たして、実在していたのだろうか。山田雄司(ゆうじ)三重大教授によると、歴史的には「忍び」と呼ばれる。史料の上で存在が確認できるのは南北朝時代からだ。戦国時代の忍びは、各地の大名に召し抱えられて、敵方の情報収集に励んだ。

 ▼本能寺の変の後、徳川家康が、伊賀・甲賀の地を抜けて本拠地の岡崎に逃れる際、地元の忍びが手助けした。これが、伊賀者甲賀者が取り立てられるきっかけとなった(『忍者の歴史』)。もっとも忍者の本格的な研究は、数年前から始まったばかりである。

 ▼その意味で、滋賀県甲賀市に住む渡辺俊経(としのぶ)さん(79)宅で見つかった江戸時代の古文書は、甲賀忍者の実態を伝える貴重な史料といえる。渡辺さんの先祖は、普段は農民だったが、尾張藩に仕える「御忍(おしのび)役人」でもあった。いわば在宅・非常勤の忍者である。

 ▼「有事にはすぐ駆けつける」「父子兄弟にも話さない」。藩に提出した誓約書の写しが見つかっている。たいまつのたき方や毒薬の配合などを記した忍術書もあった。甲賀市では、文書に解説を添えて、今月中にも刊行する。先月末には、「忍びの里 伊賀・甲賀」が、文化庁により「日本遺産」に選定されたばかりである。

 ▼日本独自の「クール」な文化として、忍者のブームをさらに大きくするチャンスにしたい。同時に平成の日本人は、忍者の危機管理術を見習うべきである。彼らは長く平和が続いた江戸時代にあっても、有事への備えを片時も怠らなかった。


タグ:産経抄
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