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水に流せない「水素水」の偽り 1月29日

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2017.1.29 05:03

【産経抄】水に流せない「水素水」の偽り 1月29日

 飲料水が日本でビジネスになった歴史は存外古い。「水道の水で産湯を使い」とは江戸っ子の水自慢である。神田上水や玉川上水が暮らしを潤した17世紀半ばには、「水売り」と呼ばれる商売が成り立ったらしい。

 ▼使われずに堀や川へ注ぐ水道水を、舟でもらい受けて郊外の人に売る。元手のかからない、うまい商法である。水質管理もうるさかった。上水道で洗濯や水浴びをする不届き者を「水番屋」が取り締まり、汚れを見つければ水門を閉じて市中への流れを止めた(『お江戸でござる』ワニブックス)。

 ▼水清ければ魚棲(す)まず。息苦しい世を渡るには人品の適度な濁りというか、いいかげんさも必要だと先人は言った。のどを潤す水はそうもいかない。命の源をよりおいしく、より安全に飲もうとするのが人類の知恵というものだろう。

 ▼著名人が愛用して話題を呼んだ「水素水」に、疑問符がついている。開封時の水素濃度が、包装に表示された数値を下回る商品があるという。水素の検出されない「水」もあるようで、国民生活センターが注意を呼びかけている。

 ▼老化を促す悪玉活性酸素の除去やダイエット効果など、「効く」「効かない」の実証は科学に委ねるとして、過剰なうたい文句には気をつけたい。健康志向の世の中は、信用のおける「水売り」ばかりだともかぎらない。無味無臭の相手に疑いの目を持ち、鼻を利かせるのが消費者の自衛策だろう。

 ▼地球上で淡水の割合は3%しかない。その大半は南極大陸などの氷で、人が使える水は0・01%前後という。「湯水のごとく」には遠い、貴重な資源である看板を偽った「水」があるなら市場から退場を願おう。飲み手の寿命が縮むことはないとして、水に流せる話でもない


タグ:産経抄
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