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【産経抄】「昭和の常識」に絶望した電通の新人社員、高橋まつりさん 12月30日

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2016.12.30 05:04

【産経抄】「昭和の常識」に絶望した電通の新人社員、高橋まつりさん 12月30日

電通本社ビル=東京都港区(伴龍二撮影)

 ロンドン五輪で、柔道男子は金メダルゼロの惨敗を喫した。選手が練習をサボっていたわけではない。むしろ合宿や試合は、多すぎるほどだった。その結果心も体もボロボロになり、本番に万全の態勢で臨めなかったことが原因とされた。

 ▼やがて、指導陣の女子選手へのパワーハラスメントが発覚する。危機に瀕(ひん)した柔道界は、新体制のもとで練習方法を見直した。リオデジャネイロ五輪で過去最多のメダルを獲得したのは、周知の通りである。それに比べてビジネス界では、いまだに多すぎる労働時間を是とする文化が生き残っている

 ▼広告大手、電通の新人社員、高橋まつりさんが過労自殺に追い込まれてから、1年が過ぎた。長時間労働問題は、石井直(ただし)社長の辞任表明にまで発展した。高橋さんの残業は月130時間を超え、徹夜に近い勤務も続いていた。

 ▼問題は労働時間の長さだけではない。亡くなる直前には、業務に関係のない忘年会の準備にまで駆り出されている。男性上司からは、「女子力がない」などと、言葉の暴力も受けていた。

 ▼元金融アナリストのデービッド・アトキンソンさんは、新著『新・所得倍増論』で、日本人の生産性の低さに警鐘を鳴らしている。世界で27位、先進国では最下位である。日本企業の社長も務めるアトキンソンさんは、労働者の勤勉さ、潜在能力の高さには賛辞を惜しまない。「やるべきことをやっていない」のは、「昭和の常識」から抜けきれない経営者である。

 ▼石井社長は会見で、社員が時間を際限なく費やすのは「業務の品質」を高めるためだった、と説明していた。聡明(そうめい)な高橋さんは、そんな「昭和の常識」の誤りに気づいていた。だからこそ余計に、絶望が深かったのではないか。

 


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