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海底トンネル計画が懐かしい 10月4日

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2016.10.4 05:03

【産経抄】海底トンネル計画が懐かしい 10月4日

 鉄道紀行作家の宮脇俊三さんが、世界最長のシベリア鉄道の旅を楽しんだのは昭和57年である。宮脇さんは不思議で仕方がなかった。昼間、電気掃除機を使っている車掌が、夜になると前世紀の遺物のようなストーブに石炭をくべている。

 ▼帰国後、鉄道の専門家に問い合わせて、ようやく納得がいった。電気で暖房するのは簡単だが、もし停電したら乗客は凍死してしまう。一方で鉄道ほど寒さに強い交通機関はない。シベリアにおける鉄道の王座は続く、というのだ(『シベリア鉄道9400キロ』)。

 ▼1904年に開通したシベリア鉄道は、当時の日本にとって軍事的脅威だった。日露戦争の要因の一つにもなる。45年に日ソ中立条約を破って満州に侵攻したソ連軍が、日本人捕虜をシベリア各地に送り込むのにも使われた。日本人にとって浅からぬ因縁のある鉄道を北海道まで延伸する。

 ▼12月に行われる安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領の首脳会談を前にして、ロシア側がこんな提案をしていることがわかった。アジア大陸からサハリン(樺太)間の間宮海峡と、サハリンから北海道の宗谷海峡に、橋またはトンネルを建設する。実現すれば、日本から欧州まで陸路で結ばれる壮大な構想である。

 ▼といっても北方領土交渉では、狡猾(こうかつ)なロシアに何度も煮え湯を飲まされてきた。日本が対露協力政策を推進すれば、かえって領土問題解決は遠ざかる。昨日の正論欄で、袴田茂樹・新潟県立大学教授も指摘していた。ここは、眉に唾を塗って見守っていたほうがよさそうだ。

 ▼そういえば、かつて日本と韓国を海底トンネルでつなぐ構想があった。佐賀県唐津市に「テスト坑」まで掘られるほど盛り上がったものだ。今はただ、懐かしい。

 


タグ:産経抄
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