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少女に勇気を与えた 9月29日

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2016.9.29 05:04

【産経抄】少女に勇気を与えた 9月29日

 朝顔といえば、江戸時代に熱狂的なブームが起こっている。各地で花合わせ(品評会)が催され、人々は珍花や奇葉を競い合った。都心に毎年夏の訪れを告げる入谷鬼子母神の「朝顔市」は、当時の名残を伝えている。

 ▼もっとも、奈良時代に中国からもたらされたころは、薬として珍重されていた。実際朝顔の種から、合成麻薬LSDに似た成分が抽出できるらしい。埼玉県朝霞市で2年前に起きた少女誘拐事件の初公判で、寺内樺風(かぶ)被告の悪行がまたひとつ明らかになった。なんとその成分を食事に混ぜて、監禁している少女を洗脳しようとしていた。

 ▼岡本綺堂(きどう)の『半七捕物帳』シリーズに『朝顔屋敷』という作品がある。遠い先代の主人が、些細(ささい)な出来事で妾(めかけ)を手討ちにした。以来、妾が着ていた浴衣の柄である朝顔が屋敷に咲くと、必ず凶事が起こる。

 ▼そんな怪談が伝えられる屋敷から、主人の息子が忽然(こつぜん)と姿を消した。半七は、朝顔の祟(たた)りによる「神隠し」とは考えない。息子を愛してやまない母親がカギを握っている。ただし「子ゆえの闇」、すなわちゆがんだ愛情が引き起こした事件だった。

 ▼誘拐から約1カ月後、少女は被告のアパートから抜け出す機会を得た。もっとも、近くの公園で出会った2人の女性に話しかけても、取り合ってもらえない。「誰も助けてくれない」。ショックを受けた少女は部屋に戻り、絶望の淵に沈んだままの日々を送っていた。

 ▼そんなある日、インターネットで、両親が自分に送り続けているメッセージを見つける。「ずっと待ってるよ」。希望の灯が再びともった。少女は、被告が支配する闇の世界からついに脱出を果たす。その勇気を与えてくれたのは、両親のまっすぐな愛情だった。

 


タグ:産経抄
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