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人の知能しのぐAI実現までの道のりは意外と遠い? 3月27日

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2016.3.27 05:03

【産経抄】人の知能しのぐAI実現までの道のりは意外と遠い? 3月27日

 〈うつくしきもの〉とお題を示され、どう答えたものか。古典通なら5秒と要るまい。

 ▼〈瓜(うり)にかきたるちごの顔〉。『枕草子』で清少納言が好んだ、言葉遊びである。「物(もの)は付(づ)け」という。〈遠くて近きもの〉では人情の機微をうたっている。〈極楽。舟の道。人の中〉。極楽と舟の道中は皮肉として、「男女の仲」は古今を問わぬ名言だろう。

 ▼才女で鳴り響いた清少納言が、生きていればと夢想する。人工知能(AI)の研究が進めば、絵空事でなくなるかもしれない。物故した短編作家の全作品を解析し、新たな短編を執筆させる。未完のまま作者が没した長編小説を書き継がせる。AIの分野でそれらの試みが進んでいることは、以前に紹介した。王朝時代をしのぶよすがもない世相を、電脳空間の女史はどのように切り取るだろうか。

 ▼AIが人の知能をしのぐ日が人類の終末になる、との悲観論がある。米マイクロソフト社が実験を中止したAIは、インターネット上で人と会話を重ねるうちにヒトラー擁護などの発言をするようになった。人の予測を裏切る進歩の速度と行く先をどう制御し、人類と共存させていくか。研究・開発に携わる一握りの頭脳に命運を委ねてはなるまい。社会全体で決めるという心構えが肝要であろう。

 ▼『枕草子』には〈近うて遠きもの〉の段もある。〈思はぬはらから、親族の中〉。情の通わぬ兄弟姉妹や親族との仲だ、と。AIは多くのホワイトカラーを職場から追う。そんな予測を重ねると、折り合うのに難渋しそうな両者の仲も「近うて遠き」に見えてくる。

 ▼では、AIが人類をしのぐ日は「遠くて近き」か「近うて遠き」なのか。小欄は後者と予想しておく。自信は1割、残りは拝むような思いである。


タグ:産経抄
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