故キッシンジャー米元国務長官は、「国際政治における巨人」だった。半世紀以上にわたって米国の外交政策をリード、その影響力は各国にも浸透していただけに、全世界から哀悼、惜別の表明が相次いでいる。

 ベトナム和平への道筋、米中関係の革命的な転換など、その功績は多大というべきだろうが、人権無視の現実外交などと「負の評価」も少なくない。

米国の外交政策をリードしてきたキッシンジャー。日本にとっては苦い経験も多い(ロイター/アフロ)

 わが国においてキッシンジャー氏を語るとき、忘れられないのは、1971年に日本の頭越しに行われた米中接近での電撃訪中だ。わが国外交にとって、長年のトラウマとなった、あの事件だ。

 氏の死去を機会に、キッシンジャー外交から日本が得た教訓に思いを致し、自省してみるのも悪くない。

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