四半世紀以上にわたって自衛隊で人的情報活動「HUMINT」に携わってきた筆者は、TBSの日曜劇場『VIVANT』の大ヒットで、自衛隊の秘密組織といわれる「別班」が話題になり、ヒーロー視されていることに、戸惑いを隠せない。かつて、日本共産党が国会で別班や後述する調査隊を執拗に追求したことを知る者にとって、この時代の変化は本当に驚くばかりだ。

 だが、別班という組織を知って最も驚いているのは、VIVANTの視聴者だろう。そこで本稿では、秘密のベールに包まれた自衛隊のインテリジェンスの真の姿を紹介していきたい。

(shironosov/gettyimages)

朝鮮戦争をきっかけに生まれた調査隊

 朝鮮戦争の勃発を受けて、1950年に警察予備隊が創設され、52年に保安隊(現在の陸上自衛隊)に改組されたのは周知のとおりだ。この時、GHQ(連合国軍総司令部)の勧告を受けて、陸上自衛隊に調査隊が編成された。この調査隊は改編を繰り返し、2009年に防衛大臣直轄の自衛隊情報保全隊になる。

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