「私、回復不可能、意識不明の場合、苦痛除去以外の延命医療は辞退致します」―――。名刺の余白に手書きした。筆者は評論家でNPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長の樋口恵子さんである。現在91歳。名刺には、2014年1月13日の記入日と樋口さんのサインが印と共に並ぶ。

(Halfpoint/gettyimages)

 樋口さんが延命医療の拒否を決意したのは、24年前にパートナーの終末期を見ていたからだ。言葉がなく、瞬きしかできない寝たきりの状態が3年間続いた。

 「私自身がそのような状態になるのが嫌だった」。そこで「お任せデス(死)でなく、自分でデスを考えよう」として、名刺に記入した。いつでも携帯し、いざという時に医師に見せられる。

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