宮城県気仙沼市での防潮堤の工事(2016年2月、写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」ということわざがある。用語検索サービス「コトバンク」(https://kotobank.jp/)によると、「不用意に口にした吸い物の熱さに懲りて、膾や和え物のような冷たい料理までも吹いてさます。一度の失敗にこりて、必要以上に用心すること(ことわざを知る辞典)」という意味である。日本人は昔からこの傾向が強い。なにか一事が生じると、慌てふためいて過剰に大騒ぎをするのである。だからこんなことわざができたのであろう。

 わたしが記憶していることでいえば、2004年に六本木ヒルズで、6歳児が回転ドアに挟まれて死亡した事故が思い出される。この事故は大きく報じられた。今後、回転ドアを通るときは、子どもには気を付けさせるように、といった注意程度では済まなかった。国交省と経産省は事故防止のためのガイドラインを発表した。全国の回転ドアの総点検がなされ、機能の改善が求められるなど、徹底した安全対策がとられたのである。

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