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「越後屋、おぬしもワルよのう」・・「名代官」自慢がお国柄だった自治体の不祥事

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【産経抄】6月18日

 小判の包みを何食わぬ顔で袖の下に入れる。不敵な笑みを浮かべて悪徳商人に声をかける。「越後屋、おぬしもワルよのう」。代官といえば、時代劇のおなじみのシーンを思い浮かべてしまう。

 ▼江戸時代、幕府の直轄領の民政を担当していた代官が、しばしば悪いイメージで描かれるのはなぜだろう。歴史家の山本博文(ひろふみ)さんによると、大正時代の講談本『水戸黄門漫遊記』がきっかけである。黄門様が悪代官を成敗する話は庶民に受けた。テレビ時代劇「水戸黄門」でも多くの悪代官が登場している(『悪代官はじつは正義の味方だった』実業之日本社)。

 ▼静岡県伊東市の前市長、佃弘巳容疑者(71)が、収賄容疑で逮捕された。現職時代、越後屋ならぬ地元の建設業者から、現金1千万円を受け取っていた。市議と県議を通算6期、市長を3期12年間務めている。剛腕市長の評判もあった佃容疑者の正体は、「悪代官」だったのか。

 ▼事件の舞台となったのは、市の中心部にあるリゾートホテルの跡地である。平成26年に建設会社が約4800万円で取得した。それから1年も経(た)たないうちに、佃容疑者の強力な指示によって、市が2億500万円で買い上げた。1千万円は、その見返りとみられている。問題の土地は現在、図書館などの駐車場として利用されているだけだ。

 ▼本のタイトルの通り、領民に慕われる優れた代官も実は少なくなかった。なかでも幕末、現在の伊東市を含む伊豆国韮山(いずのくににらやま)の代官だった江川英龍(ひでたつ)(坦庵(たんなん))は、今も地元で「坦庵さん」と親しまれている。世界文化遺産になった鉄の精錬施設「韮山反射炉」を築造し、領民に種痘の接種を勧め、貧民救済にも努めた。

 ▼もともと、「名代官」自慢がお国柄だったはずである。


タグ:産経抄
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