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『夫の後始末』・・「奉仕とは、うんことおしっこの世話をすることなのだ」

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【産経抄】5月29日

 昨年2月に夫の三浦朱門さん(91)を見送って、約4カ月後の話である。書類戸棚を整理していると、中から一万円札が12枚も見つかった。

 ▼その日三浦半島に出かける用事があり、帰り道に寄った量販店のペット売り場で1匹の子猫と出合い、買うことにした。「『おれのへそくりをバカバカしいことに使いやがって』と思ってるかもしれません。でも、滑稽なことが好きな人でしたから」。

 ▼作家の曽野綾子さん(86)が昨日、テレビ朝日系の「徹子の部屋」に出演し、黒柳徹子さん相手にユーモアたっぷりに近況を語っていた。子猫は「直助(なおすけ)」と名付けられ、今や曽野さん宅のアイドルらしい。

 ▼昨年10月に刊行された曽野さんの『夫の後始末』(講談社)が、19万部を超えるベストセラーになっている。「最初は夫を殺して死体を埋める話ですか、なんて聞かれました」。曽野さんは平成27年の秋、入院生活を送る三浦さんを自宅で介護する決心をした。実母と三浦さんの両親を自宅で見送った経験を踏まえて、三浦さんと過ごした「最後の日々」をつづったものだ。

 ▼「奉仕とは、うんことおしっこの世話をすることなのだ」。ずばり物事の本質を突く記述は、いかにも曽野さんらしい。三浦さんとささいな出来事で憎まれ口をたたきあう、ほほえましい場面もある。出棺に際して、曽野さんは自分の書いた短い手紙と、三浦さんの訃報が1面に載った小紙を棺(ひつぎ)に入れたそうだ。

 ▼三浦さんといえば、「妻をめとらば曽野綾子」と色紙に記したことで知られる。妻は、夫の「後始末」を見事に成し遂げただけではない。作家として、夫が亡くなった当日も原稿を書いていた。そんな曽野さんを誰よりも理解して、たたえた言葉だったのだろう。

 


タグ:産経抄
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