前回はFacebookのデータ不正流用問題を論じた。問題の発端となったデータ分析企業のケンブリッジアナリティカは廃業を決定し、Facebookも公聴会後に様々な対策に取り組むと述べている。とはいえ、今後もFacebookやSNSに向けられるまなざしは、今以上に厳しくなるだろうことが予想される。

 本連載ではアルゴリズムやロボット、スマートスピーカーといった技術が社会にもたらす問題を議論してきたが、今回は昨今話題の「フェイク」に関する動画や音声が、ポルノを題材とすることで深刻さを増している点について考えたい。またフェイク動画の普及が、すべての証拠の「真偽」に関わる困難についても考察を深めたい。

 

(iStock/AntonioGuillem)

ポルノ動画に進出した「フェイク」の波

 一昔前はヌード写真の顔だけを有名人のものと取り替える「アイコラ(アイドルコラージュ)」が問題化されたが、2017年末、アメリカの掲示板サイト「レディット」に衝撃的な動画が投稿された。それはポルノ動画の顔部分を有名人のものに差し替えた「フェイクポルノ」動画であり、技術的にもレベルが高く、一見するとフェイクかどうかがわからないものであった。故にフェイクポルノは社会的にも、アイコラのそれを遥かに凌ぐレベルの影響力を有してしまっている

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