千葉県香取市にある伊能忠敬像。彼は人生で2度のリセットを味わった

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 あったかもしれない人生――。これまで続いてきた人生を見つめ直し、いったんリセットしたくなるときがある。新しい人生を始めるのは勇気がいるし、不安もある。でも、せっかくなら違った人生を経験するのもいいんじゃないか。

 歴史・時代小説は人生の宝庫だ。厳しい身分制度があり、職業選択の自由も制限されていた江戸時代以前。人が生き方を変えるきっかけは、自分の希望ではなく、社会の変化でやむなくということが多かった。けれどそんな中で、転機をチャンスに変えて人生のリセットに成功した人たちがいる。そんなリセットの先例を、歴史・時代小説の名作を通してぜひ味わっていただきたい。きっとヒントが見つかるはずだ。

吉川永青 誉れの赤

 2017年の大河ドラマ「おんな城主直虎」は、徳川のもとで井伊家を再興した井伊万千代(直政)の配下に〈赤備え〉軍団がつけられ、小牧・長久手の戦いに挑む──というところで最終回を迎えた。甲冑や武具を赤で揃え、その勇猛さで恐れられた家臣団である。幕末の大老・井伊直弼が〈赤鬼〉と呼ばれたのも井伊のイメージカラーが赤だったからだ。

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