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凶悪犯・・枕を高くして眠っている者たちが、まだ大勢いるということだ

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【産経抄】4月16日

 現在の東京都中央区にあった病院で起こった事件である。医療用アルコールの減り方が早すぎる。誰かが飲んだに違いない。明治7年に英国から来日して外科医を務めていたヘンリー・フォールズが、すぐに犯人を突き止めた。

 ▼そもそもの始まりは、友人だった米国の生物学者エドワード・モースが発見した大森貝塚である。縄文土器の分類作業を手伝っているうちに、古代人が付けたとみられる指の跡を見つけた。そういえば、日本には証文に母印を押す習慣がある。フォールズにはあるアイデアがひらめいた。

 ▼指先の模様の違いで、個人を識別できるのではないか。早速、家族や友人知人の指紋を集め始めた。冒頭の事件に戻れば、解決の決め手となったのは、犯人がコップ代わりに使ったとみられるビーカーに残されていた指紋である。教え子の一人の指紋とぴったり一致した(『指紋を発見した男』コリン・ビーヴァン著)。

 ▼フォールズは明治13年、英国の科学雑誌「ネイチャー」に日本から投稿した論文で、指紋捜査の有効性を世界で初めて示した。現在、日本の指紋識別技術は世界でもトップクラスらしい。広島県廿日市(はつかいち)市で14年前、女子高生が自宅で刺殺された事件で、容疑者が逮捕されたのも、指紋の一致が決め手となった。

 ▼もっとも捜査の急展開は、偶然の要素が大きい。山口県内の勤務先で男が起こした同僚への暴行事件がきっかけとなった。事情聴取した警察が男の指紋とDNA型を採取すると、殺害現場に残されたものと一致した。今のところ、被害者と男との接点は見つかっていない。

 ▼凶悪犯罪の現場に指紋などの有力な手がかりを残しながら、枕を高くして眠っている者たちが、まだ大勢いるということだ


タグ:産経抄
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