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「子ども食堂」の一番のごちそうもにぎわいである 4月6日

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【産経抄】4月6日

 作家の故久世光彦さんが語る幼い頃の思い出である。母親が毎朝炊くごはんに必ずオコゲが出る。それに塩を少しまぶし焼き海苔(のり)を巻いて、こっそり渡してくれた。

 ▼朝食前、姉や兄に見つからないように台所の隅で食べるのが、何よりの楽しみだったという(『昭和恋々』)。久世さんにとっての、「おふくろの味」であろう。もっとも近年、それを知らない子供が増えている。

 ▼中学3年のT君もその一人だった。母子家庭で、母親は昼も夜も仕事をしている。T君は毎日、500円ずつもらって、弁当を買って食べていた。子供の貧困問題に関心があった栗林知絵子さんは、ボランティア学生とともにT君に勉強を教えていて、その事実を知る。

 ▼T君のような子供に手を差し伸べようと、地域の仲間とともにNPO法人を立ち上げた。平成25年には、東京都豊島区で「子ども食堂」を始める。幼児から高校生まで、それまで独りぼっちで夕食を食べていた子供が集まってきた。温かい食事を無料で提供するために、食材の多くは寄付でまかなっている。

 ▼同じような食堂が、今や全国で2300カ所もあり、年間約100万人が利用していることが民間団体の調査でわかった。高齢者ら大人も受け入れ、地域交流の場となっている所もある。もっとも、食中毒やけがの対策など、いくつかの課題も浮かび上がってきた。多くの食堂が苦しい財政を強いられてもいる。

 ▼久世さんの本職は、テレビドラマの演出家だった。大ヒットした「寺内貫太郎一家」では、家族がちゃぶ台を囲んでワイワイ食事をしていると、必ず騒動が起きた。「子ども食堂」の一番のごちそうもにぎわいである。必要としている子供がいる限り、運営を続けてもらいたい。


タグ:産経抄
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