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3月14日[Sponsored]

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【産経抄】3月14日[Sponsored]

 かつて日本人は、地域によって異なる種類の桜を楽しんでいた。古来桜の名所として知られる吉野山を抱える近畿地方では、なんといってもヤマザクラである。

 ▼「願わくば花の下にて春死なむその如月の望月の頃」。こんな辞世の句を残すほど桜を愛した西行法師も、旅の途中で目にしたかもしれない。紀伊半島南部で群生する早咲きの桜が、ヤマザクラとは違う品種であることがわかった。約100年ぶりに発見された、国内で10種目の野生種となる。三重や和歌山にまたがる熊野地方にちなみ、「クマノザクラ」と名付けられた。

 ▼テレビのニュースで、各地の桜の開花予想や桜前線が話題になるようになった。花見のシーズンも目前である。この場合の桜はほとんどの場合、ソメイヨシノを指す。なにしろ現在、日本の桜の8割を占めている。

 ▼幕末から明治にかけて園芸が盛んだった染井村(現在の東京・駒込)の植木師が、「吉野桜」として売り出したのが最初とされる。花付きがよく成長が早いため、急速に全国に広まった。一斉に咲いて散る性質も、日本人好みといえる。

 ▼もっとも近年、その弱点も指摘される。接ぎ木による栽培によってすべての木が同じ遺伝子を持つため、病気が流行しやすい。特定外来生物である「クビアカツヤカミキリ」が、木の幹を食い荒らす被害も相次いでいる。このため各地で、「ソメイヨシノ離れ」も起きているという。

 ▼熊野地方でも、植栽後60年以上たったソメイヨシノをクマノザクラに植え替えようと、苗の育成が始まっている確かに鮮やかなピンク色の花が特徴の桜は、観光の目玉になり得るソメイヨシノ一辺倒から他品種の桜へと、歴史回帰の転換点を迎えているのかもしれない。

 


タグ:産経抄
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