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アキハバラはアキバが正しい 10月20日

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【産経抄】アキハバラはアキバが正しい 10月20日

 「おひざ送り願います」。一度使ってみたかった。「席を少しつめてください」という意味で、かつて普通に使われた東京弁の一つである。復活がかなえば、満員の通勤電車内のギスギスした雰囲気も随分変わってくるだろう。

 ▼東京弁とは何か。明治政府が国家事業として推進した「標準語」は、「東京の山の手の中流階級の言葉」だった。それに対する下町言葉を指す。先月末に89歳で亡くなった早稲田大学名誉教授の秋永一枝さんは、東京・両国の商家に生まれた。幼い頃から日本舞踊を習い芝居に通い、東京弁を聞いて育った。

 ▼「下町言葉は消滅した」。銀座生まれの国文学者、池田弥三郎さんの言葉を耳にしたのは、大学院時代の昭和31年である。「東京弁は生きている」ことを証明しようと、下町で育ったさまざまな職業の人たちへの聞き取り調査を始めた。

 ▼半世紀かけて集めたカードやテープをもとに平成16年に刊行したのが、『東京弁辞典』だった。秋永さんによれば、東京弁がなくなれば、近代文学も落語も理解できなくなる。

 ▼『東京弁辞典』では、電気街で有名な秋葉原は「アキバハラ」と読ませる。明治初期、広場に火難よけの神、秋葉神社を勧請(かんじょう)したことに由来する。秋永さんにとって現在の通称「アキバ」はむしろ好ましかった。つくばエクスプレス開業に際して、新しい駅名に採用するよう望んだもののかなわなかった。

 ▼東京の風景を一変させたのは、関東大震災と戦災、そして東京オリンピックだったといわれている。秋永さんの調査によれば、東京弁を話す人が激減した要因について、前の2つは同じ、3つ目はバブル期の地上げだった。下町に住んでいた人たちが、周辺地域に追い立てられたからだ。

 

 


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