世界人民の大団結万歳! そんな掛け声とは裏腹に、1970年代の中国共産党に「日本解放」を計画できる余裕があったとは思えないのだが・・・(北京・天安門広場にて筆者撮影)

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 2017年、人文分野の上半期のベストセラーになったのがケント・ギルバート氏の著書『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社+α新書)だ。書籍の帯では「21世紀の『菊と刀』」と広告され、私が8月に書店店頭で確認した限りでは43万部を突破したという。

 だが、その内容には“微妙”な部分も多い。書中では「儒教」の定義がなんら示されないまま、中国や韓国のネガティブなニュースの理由を「これは儒教のせいだ」と特に根拠なく言い切る記述が繰り返され、やがて中盤から先は「儒教」の話すらほとんど出てこなくなる(ちなみに同書で儒教の経典の引用は、序章で大修館書店の『論語の講義』からの孫引きが1回あるだけだ)。

大ヒット中のケント・ギルバート氏の書籍(池袋駅構内の書店で筆者撮影)

 また、ギルバート氏はアメリカ人のはずだが、なぜか書中では英語メディアをほとんど参照せず、『週刊文春』『週刊新潮』や『WILL』をはじめ日本の雑誌ばかりをさかんに引用している。書中で言及される他の識者も、櫻井よしこ、石平、青山繁晴・・・と国内論壇の保守系言論人ばかりだ。著者は外国人とはいえ、同書の内容は日本国内の排外主義的保守派の世界観をひたすら忠実に反映しているので、「アメリカ人ならではのアジア観」を知ることを期待して読むと面食らう。

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